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金沢市は石川県の県庁所在地であり、北陸三県の政治・経済の中心都市として発展している。犀川・浅野川によって刻まれた台地の辺縁部を中心に市街地が発展しており、安土桃山時代以降「加賀百万石」の前田氏の城下町として、防衛上の理由から複雑な街路網が形成された。高度成長期以降、都市圏の拡大にともなって、周辺の田園地帯や東部の丘陵地帯の宅地化が進行し都市圏人口は65万人を数える。
道路網は基本的に市内中心部から各方面へ放射状に伸びており、通過交通が多い国道8号線バイパスが市内中心部のはるか北西を半環状に走っている以外、環状道路の整備が遅れている。そのため繁華街の片町・香林坊・武蔵が辻、ビジネス街の南町を経由し、市街地を南北に貫くメインストリートの国道157・159号線(旧国道8号線)1本に交通が集中している。また各放射道路はメインストリートから枝状に分岐する形になっており、分岐する交差点では市内中心部へ向かってメインストリートへ合流しようとする車の信号渋滞が激しい。
公共交通機関は大正期以来、路面電車が中心であったが、1968(昭和43)年の廃止以降はバスに頼っており、JR北陸本線、北陸鉄道といった鉄道も郊外にターミナルをもち、市内中心部へはバスによるアクセスを必要としている。
戦災を免れたこともあり、金沢市内中心部の道路は狭かった。よって高度成長期にモータリゼーションの進行で市内中心部の交通渋滞が深刻化すると他都市に見られるようなバイパス建設、道路拡張といったハード面での交通対策と並行して、地方中都市としては先進的ともいえるソフト面での対策を打ち出していった。その代表例がバスレーンの設置であった。路面電車廃止によっても中心部の渋滞はさほど緩和されず、逆に路面電車の代替であるバスが渋滞でダイヤどおりに走れない事態となった。よって「公共交通への転換促進をめざし、バス運行のサービスレベルを向上させるべく」(金沢市パンフレットより)1971(昭和46)年から朝ラッシュ時のバスレーンが設置されている。当時は東京、大阪についで全国3番目の導入で、片側2車線のうち1車線をバスレーンとする(東京、大阪は片側3車線以上)取り組みは全国の注目を集めたという。これによってバスの定時性確保に成功し、バスレーン導入路線の延長、夕方ラッシュ時への拡大と続いた。金沢においてはこのバスレーンを有効に活用し、さらなる公共交通への転換を促進する施策がパークアンド(バス)ライドであると位置づけられる。
金沢市では1970(昭和45)年ごろから、都市交通のマスタープランにおいて現在のパークアンドライドにあたる施策の導入が提言されてきたが、実行に移されたのは1988(昭和63)年のことである。ゴールデンウィーク期間中に市内中心部に流入する観光客のマイカーを郊外の臨時専用駐車場へ誘導し、専用バスを頻繁運行して観光客を兼六園などがある市内中心部へ輸送するというものである。システム利用を無料とし、実験的色彩の濃いものであったが、利用客におおむね好評であったため翌89年からシステム利用を有料(当時は1台につき300円)としたうえで、ゴールデンウィークを中心にさほど大きな変更もなく現在まで続けられている。本年度(1997年)のゴールデンウィークに実施されたものを例に具体的な内容をみる。
例年どおりゴールデンウィーク後半の5月3日(土)4日(日)に金沢市と石川県を中心とする「パーク・アンド・バスライドシステム実行委員会」によって実施され、北陸自動車道、国道8号線、能登有料道路の結節点にあたる北陸道金沢西、東インターの周辺にそれぞれ臨時駐車場(主として公共機関の駐車場を借用)を各650台ずつ設置している。臨時駐車場からは8:00〜19:00に市内中心部の観光スポットを循環する北陸鉄道によるシステム利用者専用バスが6〜10分間隔で運行され、市内中心部ではバスレーンの設置などによりバスの定時性が確保されている。システム利用者からは運行管理費として車1台につき1日1000円を徴収している。1000円という料金は駐車料金と同乗者全員のバス運賃を合わせたものであり、高いか安いかは評価が分かれるところであるかもしれない。実際は駐車場が常に満車になるほどの利用はないものの、地理不案内の遠方からの観光客にも好評であり、ここ数年のデータをみても1日のべ1000台を超える利用がある日もみられ、需要は決して低くない(計1300台という駐車場台数は妥当であるといえる)。
肝心の時間短縮効果については、専用駐車場から市内中心部へ向けてはバスレーンで運行環境の整備されているバスの方が当然早くなっている。しかし駐車場入庫とバスへの乗り換え時間を考慮した場合、直接市内中心部へマイカーで乗り入れたときより早いか否かは調査対象外であり、定かではない。市内中心部へのマイカー乗り入れが禁止されるわけでもなく、結局は総合的な渋滞緩和策とみるより、1000円を払いバスに乗り換えてもメリットがあると考える人のために一つの手段を提供している、という程度にとらえる方が適当であろう。
観光期パークアンドライドの一応の成功を受けて、そのノウハウを本来の目的である通勤時の渋滞緩和に応用することが検討された。金沢市、石川県では1989(平成元)年度より3年にわたって「金沢市パーク・アンド・ライド研究会」を設け、金沢都市圏における交通問題の現状把握、アンケート調査によるパークアンドバスライドシステムの利用意向調査と実施にあたっての駐車場整備候補地の提案などを行った。そして1992(平成4)、1993年に通勤時パークアンドライドの本格実施に向けての試行実験を1回ずつ実施している。
まず1992年の実験は11月30日(月)〜12月4日(金)の5日間にわたって実施された。金沢市南郊の野々市町の文化会館(500台)と金沢市北部の国道8号線金沢バイパス近くの金沢循環器病院(200台)にそれぞれ臨時専用駐車場を確保、朝ラッシュ時の7:30〜8:30に市内へ向けて5〜10分間隔で、夕方・夜間の17:00〜22:00に市内から臨時駐車場へ15〜30分間隔でシステム利用者専用バスをそれぞれ運行した(帰宅時は一般の路線バスも利用できる)。またバスはバスレーンを走り定時性が確保されているのは前述の通りである。利用者は都心部の勤務地へマイカー通勤する郊外居住者から勤務先の事業者を通じて確保された「試行モニター」による681台のみで、料金は徴収していない。
実際の利用状況は人数ベースの平均で南部54%、北部47%であった。主催者側はモニターが利用を希望する者だけを募ったわけではないとしており、その点からみると利用状況は決して良いとはいえないものの、それなりの人数だったのかもしれない。
本格実施に向けての資料とするため、システム試行にともなう道路交通状況の変化についての調査が行われており、これを検討してみる。まず結論として交通量削減の効果はみられなかった。募集されたモニターの絶対数が十分ではなかったことに加え、前述したような5割程度の利用率であったためシステム実施による交通量変動が平日の交通量変動の範囲内となった。つまり明確な削減効果がみられなかったということである。一方利用にあたっての大きなポイントとなる所要時間については、南部方面ではシステム利用の優位性が示される結果となった。駐車場に近い野々市町太平寺から金沢市中心部の香林坊までの5.9km区間の所要時間を比較すると、マイカー(なおマイカー同様の走行をするテスト車を調査のため走らせている)が平均42分かかっているのに対して、バスレーンを中心部まで急行運転するシステムバスは23分であった。また同じバスレーンを各停運転する路線バスは27分であった。特に注目されるのは天候によるデータの変化である。マイカーの所要時間が晴天時の最小25分に対して雨天時に最大83分もかかり実に58分もの差が出るのに対し、システムバスは最大31分、最小17分でマイカーよりはるかに定時性が高いという結果が出た(路線バスについても停車するバス停の分だけシステムバスより遅かったものの、やはり定時性は高かった)。ただ北部方面に関しては所要時間・定時性ともさほどの格差がみられなかった。これは市内中心部を貫く国道157号線がルートの大半を占める南部に対して、北部のルートはもともとさほどの渋滞多発区間ではないことが大きな原因であるといえる。これは試行実験のルート選定が不適であったということにもなるが、駐車場が確保できる地点が限られていることもあり、なかなか難しい問題である。
システム試行にあたってモニターと一般のマイカー通勤者にそれぞれアンケートが行われているが、本格実施時にも利用意向のある人(条件により利用も含む)がモニターで実施前のアンケートの約3倍(64.9%)、マイカー通勤者でも約2.1倍(45.0%)になっており、システムの利用意向が高まっている。システムのサービスに関する要望としては「低料金による本格実施」「所要時間短縮」「終バスの延長」などの要望が多かった。
1993年の実験は10月25日(月)〜10月27日(水)の3日間にわたって行われている。前回の実験で結果が芳しくなかった北部方面が今回の実験では除外され、南部方面が前回同様の野々市町文化会館に330台に加えて、南部の加賀産業道路から市内へ向かう道路沿いに360台、180台、100台、640台、合計970台分の臨時専用駐車場が確保された。システムバスは駐車場が今回は大きく分けて3地区に分かれたため、それぞれから市内中心部へ向かう3系統が7:30〜8:45に5〜10分間隔、17:30〜23:00(前回実験を踏まえて終バス延長)に15〜30分間隔で運転され、前回同様ルートの過半でバスレーンを走る。またバスレーン上で各停の路線バスを急行のシステムバスが追い越せるように、途中2か所のバス追い抜き帯が確保されている。利用者は前回同様に募られたモニターに加え、マスコミを通じてもモニターが募集されており、料金は無料である。
利用状況は人数ベースの平均で62%と前回実験(南部)より8ポイント増加している。駐車場ごとに比べても利用状況に大差はなかった。前回より利用状況が良くなっている理由は、マスコミ公募のモニターを採用したこと、前回利用率が悪かった金曜日(「花金」で飲みに行く人は最初からバスに乗るから)が今回は実験期間に入っていなかったことなどもあるが、前回のアンケート結果にも表れたようにシステムに対する認知度が高まり、同時に利用意向も高まっていたことが大きいのではないだろうか。
前回に引き続き今回も道路交通状況の調査が行われた。交通量自体は今回も削減効果がみられず、逆にルート上にある犀川大橋の交通量が試行前より2.4ポイント増加したほどであった。しかし3地区の駐車場からのルートが合流する有松交差点から広小路交差点までの1.6km区間での渋滞長が8:00ごろから試行前の同時刻の渋滞長よりも短縮しはじめ、8:30には約400m短縮するなど、渋滞が「はける」のが早くなるという効果が表れている。またこの区間のマイカーの所要時間も平均32%短縮されている。交通量が変わらないのに渋滞が短くなり所要時間が短縮するという現象は不可解ではあるが、渋滞長・所要時間が短縮した事実は素直に受けとめるべきだろう。やはり前回より参加モニターが大幅に増加したことが、効果が出た大きな要因であると考えられる。今回はシステムバスの所要時間についてのデータが残念ながら入手できなかったが、前回実験のデータを考慮するとマイカーの半分程度になり、路線バスでもマイカーの60〜70%程度になっているものと推測される。
今回も前回同様のアンケートが行われた。モニターの中で本格実施時にも利用意向のある人は前回をさらに上回って75.2%に達しているが、マイカー通勤者の中で「利用したくない」と答えた人が59.2%に増加した(前回45.9%)のは注目される。試行実験を重ね、システムの認知度が高まっていく中で、モニターがシステムの効果を実感していく一方、一般のマイカー通勤者の中に「パークアンドライドは自分に合わないシステムだ」と感じる人が多くなったのであろう。「利用したくない」とした人は「仕事において車を使う」「帰宅時間が遅い」「(渋滞の少ない)帰宅時もバスの制約を受ける」などの理由を挙げており、これらはそのままパークアンドライドシステムの弱点を鋭く指摘したものとなっている。システムのサービスに関して「低料金による本格実施」を望む人が前回同様多かった。具体的な金額としては1か月あたり1万円(29.8%)、1万5千円(24.4%)などとなっている。前回のアンケートで多かった「終バスの延長」の要望は、終バス時刻の繰り下げにより半分以下に減った。その一方で朝7:00からのシステムバスの運行を希望する人が約30%いた。さらに市内中心部から7〜15kmに居住する人の利用意向が特に高いという結果も出ている。金沢では市内中心部から7〜15kmの地域になると、バスの運行頻度が低くなっている場合が少なくない。
2回の試行実験を通して、(運賃は別として)システムバスのサービスレベルはある程度の完成の域に達した。バスレーンによる定時性が確保され、所要時間や運行頻度もそれなりの評価を得ている。また交通量の削減こそ確認されなかったものの、第2回の実験では渋滞長とマイカー所要時間の短縮という効果が表れた。そしてモニターの利用意向も高まってきた。よってパークアンドバスライドシステムの有用性が、一応証明された結果となった。しかしこれはあくまでも実験によって証明されたにすぎず、本格実施に至るには問題も多い。
まず駐車場確保の問題である。試行実験では第1回が文化会館と病院、第2回が文化会館と市営体育施設の駐車場を臨時に借り受けている。しかし各駐車場とも特別に大規模なわけではなく、公共施設の駐車場などはイベント時に満車となってしまうこともある。よってこれらの駐車場をパークアンドライドという本来とは異なる目的で、継続的に借り受けることは難しい。確保される駐車場が少なくなればなるほど、渋滞長とマイカー所要時間短縮の効果は当然小さくなってしまうであろう。
またシステムバスの運行を確保できるかも問題である。試行実験は地元の北陸鉄道がシステムバスの運行を担当したが、一般の路線バスより速く、空いているシステムバスを継続的に運行すると、路線バスの利用者から不満が出ることは確実である。また北鉄サイドとしても車両運用上のロスも大きくさらに試行実験時のようにマスコミに大々的に取り上げられるとは考えられないので、北鉄の企業としてのイメージアップ効果が小さいのではないか、ということにもなろう。よって試行実験時のままのシステムバスのサービスレベルを維持するのは並大抵のことではないだろう。
想定される利用者の対象を絞る必要もある。金沢のパークアンドライドは典型的な行政主導型であり、利用者の意見をシステムに反映させるのが難しい構造にある。しかし第2回実験のアンケートでシステムに対する「好き嫌い」がはっきりしたように、システムの利用意向が強い層はある程度限られているのである。利用者の意見を汲み上げ、本当に利用したい人に条件を合わせなければ十分な効果と利用者の満足が得られない。具体的には「都心から7〜15kmに住み、仕事で車を使わず、標準的時刻に出勤・退勤する人」を当面の対象とすべきだろう。
そして何より利用料金の問題は避けて通れない。無料であっても50〜60%の利用率にすぎないにもかかわらず、有料にして本当に利用客を確保できるのか、ということである。先行例ともいえる観光期パークアンドバスライドでは有料化によっても利用客の減少はみられなかったが、利用者にかなり甘い料金設定がなされており、実施主体である金沢市、石川県の負担が大きくなっている。通勤時では試行実験時のアンケート結果から1か月あたり1万円〜1万5千円程度に設定するのが適当であろうが、この程度の額では県・市あるいは(運賃割引などで)北陸鉄道が大きな負担を強いられるようである。
2回の試行実験でパークアンドライドの効果が証明されたとして、金沢市と石川県が中心となり「金沢都市圏パーク・アンド・ライドパイロットシステム実施協議会」が結成された。そして1996(平成8)年11月1日より「パーク・アンド・ライドシステム『K.Park』」が本格実施されることになった。
2回の試行実験で駐車場が設置された野々市町太平寺の野々市町文化会館に近い2つの郊外型ショッピングセンターの駐車場が、当初は計90台分(ジャスコ野々市店に60台、NOA21に30台)システム利用者用の駐車場として確保された。駐車場の営業時間は平日(土曜、年末年始を除く)の7:00〜24:00となっている(ジャスコ駐車場のみ月1〜2回の大売り出し日や旧盆、年末に文化会館駐車場へ臨時に移動することになっている)。駐車場台数が少なすぎ、さらに路線バスとのサービスレベルを調整する意味もあってか、システム利用者専用バスは運行されず、路線バスに混乗する形式に改められている。これにあわせて、通勤特急バスを新たにシステム駐車場最寄りのバス停に停車させるなどの措置が取られており、普通、快速も合わせて朝ラッシュ時2〜10分間隔、帰宅時10〜30分間隔、終バス香林坊発23:00となっている。利用者は「金沢市南部方面、及び周辺市町村にお住まいで金沢中心部にマイカー通勤されている方」(主催者発行パンフレットより)で3か月以上継続して利用できる人を対象に、自治体広報紙やマスコミなどを通じて公募されている。希望者はまず主催者である実施協議会事務局に『K.Parkメンバー登録』をすることになっており、その後、北陸鉄道サービスカウンターでシステムチケット(駐車場を利用するために必要)を購入する。そしてシステム利用料金として1か月あたり「バス乗車代+5000円(商品券)」が徴収されることになった。本格実施ということで、試行実験時にはなかった料金がはじめて設定されたわけではあるが、結局は駐車場提供者であるショッピングセンターの商品券5000円分とバス乗車代=路線バス運賃(回数券23枚綴り×2で11,600〜12,800円、1か月定期券で12,180〜13,440円、実施当初の金額、利用する駐車場によりバス停が1〜2つ分異なり、金額に差がある)のみということになった。
利用状況は当初90台の募集に対して登録41台、初日(金曜日)の利用は31台のみという低調ぶりであった。その後、1997年8月の取材時点では駐車場台数が150台に増強されていたが、やはり登録台数は80台にとどまっており登録車両の中での利用率もわずか45%程度である。アンケート調査がまだ実施されていないため、利用率低迷の原因に関しては不明な点が多いが、今回は自主的に利用を希望する人ばかりが登録しているはずなので、主催者側も90%程度の利用率を見込んでおり、登録台数自体ももう少し大きい数字を予想していたようである。データはないものの、参加台数の少なさから交通量、渋滞長にほとんど変化はないと考えられるが、やはりバスレーンを走る路線バスは試行実験で発揮されたような定時性が確保されている模様である。
主催者が「パイロットシステム」と位置付けている通り本格実施というには程遠いものであり、試行実験において提起された課題を解決しきれないままの「見切り発車」であると言わざるを得ないのだが、一応パークアンドライドが継続的に実施されることになった。しかしあまりの利用状況の悪さは大きな問題である。バスに乗り換えることで定時性は確かに確保されており、その便利さは試行実験を通じて認知されたはずではあったが、やはり有料となると抵抗があるのであろうか。今回の料金はバス乗車代と商品券代のみで利用者に甘いものであると考えられる。マイカー通勤の場合、都心部月極駐車場代と燃料費の合計で約15,000円必要であるとされている。商品券は自由に使えるのであるから、バス乗車代との差2000〜3000円が駐車場に入ってバスに乗り換える手間賃という単純計算が成り立つ。この条件でシステムを利用してもよいという人は本当にこれほどまで少ないのだろうか。より効果的な広報活動が望まれる。そしてシステム利用者に対するバス運賃の割引もぜひとも実施したいところだ。これはある意味でいかなる広報活動よりもずっと効果的である。実際、主催者側も北陸鉄道に働き掛けているようであるが、良い返事は今のところないという。同じ路線バスを使うのに一般客とシステム客とで運賃が違うのは不公平だというのも確かではある。しかし長期的にみてバス利用客増につながるはずであり、北陸鉄道は割引切符を発売するような感覚でシステム利用者に対する運賃割引を実行すべきなのではないか。
なお駐車場の台数は当面、拡大の予定はないという。今回は野々市町文化会館の駐車場使用は断られており、他の公共機関の駐車場も継続的に借り受けるのは難しい。郊外型ショッピングセンターも確かに駐車場は広いが、少なくともジャスコ野々市店とNOA21はこれ以上の駐車場の提供は難しいようである。野々市町に関していえば現在のシステム駐車場の周囲にもまだ水田が点在し、新たにシステム専用駐車場を建設することも技術的には不可能とは思えない。しかし実施協議会の予算は限られており、何より現行の駐車場がガラ空きでは莫大な投資には踏み切れまい。あえて駐車場の拡大を考えるとすれば、他方面から市内中心部へ入るルート上ということになろう。
金沢のパークアンドライドは観光期、通勤時の試行実験と着実に実績を重ねた上で本格実施に踏み切ったはずであった。しかし利用は思うように伸びていない。今回の執筆にあたって金沢市都市政策部交通対策課の小村正隆さんのお話を参考にさせていただいたのだが、主催者側もあまりの利用率の低さに当惑しており、近々大規模なアンケートを実施しその原因を探る、とのことであった(1997年8月現在)。行政主導型のパークアンドライドである以上、利用者の意見を聞くことができるアンケートは確かに重要であり、当面はアンケートの結果待ちということになろう。しかし試行実験の結果をいま一度分析し直すことも重要ではないか。システムの問題点である駐車場確保や料金制度に関することは、試行実験時にすでに認識されていたはずなのである。
見切り発車した本格実施ではあるが、現行のまま放置しては過去の実績はすべて無駄になってしまう。ぜひとも前向きの対策をとっていただきたい。
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Last modified: 2008/9/27
一橋大学鉄道研究会 ikkyotekken@yahoo.co.jp