第1部 モーダルシフトの概要


この文書に関する一切の権利は一橋大学鉄道研究会が保有します。 無断複製・転載を禁じます。


第1章 「モーダルシフト」とは

モーダルシフトとは、「主として、幹線貨物輸送から省エネ・低公害の大量輸送機関である鉄道または海運へと転換し、 鉄道・海運とその末端のトラック輸送を機動的に組み合わせた輸送を推進すること」をいう。 つまり、ヒト・モノの輸送手段が「自動車よりも鉄道・船へ」と変化しようとしている。 では、なぜこのような変化が起こったのだろうか? 詳しい説明は後の章に譲るとして、ここでは、現在の物流システムの問題点・モーダルシフトの利点について簡単に触れておきたい。

まず、自動車輸送が、化石燃料を燃やすことで大量の温室効果ガス(主に二酸化炭素)や大気汚染源 (一酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物など)を排出していることを挙げなければならない。 地球的規模で環境破壊が叫ばれている今、私たちがより環境にやさしい輸送手段を使うのは当然のことといえるだろう。 それに、化石燃料の消費が環境に与える影響を論ずる前に、 化石燃料は現状のまま使い続けると近い将来枯渇するという事実を忘れてはいけない。 たとえば、石油資源はあと100年持たないといわれている。 もっとも、鉄道も化石燃料を消費し、二酸化炭素を排出していることに変わりはない。 しかし、ヒトは必ず移動し、モノは必ず運ばれるものである以上、私たちは、化石燃料にできるだけ頼らないで、 かつ環境にやさしい輸送機関を利用しなければならない。 その点で、鉄道には将来的に利用価値があるといえる。 なぜなら、鉄道は電気で動き、その電気は化石燃料に依存しなくても生み出せるからである。

次に、モーダルシフトによって道路交通混雑が解消されることに触れておく。 交通渋滞だけでなく、都市部における駐車場不足など、自動車輸送の抱える問題点が一気に改善されていくのである。 渋滞発生箇所があると、政府は、新たな道路(バイパス)を作り、その渋滞を緩和させようとするが、 結局はそこに新たな車が流れ込み、また新たな渋滞が発生するという悪循環が繰り返されている。 これが日本の道路建設の現状である。 それにもかかわらず、日本ではすでに毎年15兆円前後もの税金が、道路建設に投資されている(国土交通省道路局より)。 このような行き詰まりを見せる道路建設よりも、鉄道や港湾の整備に投資すれば、先に述べたような利点が活かせるし、 コスト削減にもつながるはずである。

また、モーダルシフトの推進によって、輸送経路が多様化することも大きな利点の一つに挙げられる。 複数の経路を確保することで、災害発生時のような不測の事態が生じた時でも安定した供給が可能となり、 交通混雑による配送の遅れも避けられる。 このように、物流システムが効率的になればなるほど、私たち顧客の満足度も上がるというものである。 それとは別に、モーダルシフトが交通事故防止に大いに役立つものであるということも、最後に付け加えておきたいと思う。


→「第2章 モーダルシフトの実際例」へ



この文書に関する一切の権利は一橋大学鉄道研究会が保有します。 無断複製・転載を禁じます。


Last modified:2008/9/23

一橋大学鉄道研究会 ikkyotekken@yahoo.co.jp