コラム:何から造ってほしいのか

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整備新幹線のトップを切って高崎・長野間が開業した北陸新幹線であるが、それを延伸する形で長野・上越間が着工されることになった。この区間は北陸3県(富山・石川・福井)から東京へ向かう旅客の利用が見込まれるが、採算性から言って次に建設されるのが妥当な区間は、明らかに大阪から北陸方面への区間である。北陸3県は歴史的に関西方面とのつながりが非常に深く、特に繊維産地である石川・福井両県は船場の繊維問屋街を擁する大阪との人の往来が、今日でも東京との間よりもはるかに多い。

石川県の小松及び富山と東京との間には多数の航空便が開設されており、この間の交通の便は十分である。新幹線を開業させて無理に旅客をシフトさせることは、空港政策上も好ましくない。実際、新幹線の開業へ東京(羽田)線が廃止・減便された花巻空港(岩手県)・山形空港などでは、巨額を投じて整備された空港施設を持て余している。

大阪と北陸3県との間は航空路線を開設するには少し距離が近すぎる(富山・関西線が開設されているが苦戦している)。しかしながら大阪から特急列車で金沢まで約2時間半、富山まで約3時間かかり、決して近いというわけでもない。本来この程度の距離が鉄道(新幹線)の特性を引き出すのに最適なはずである。よって大阪から北陸方面へのルートこそが旅客流動にも合致した、最も建設を急ぐべき区間となるのではないか。

少し細かい話になってしまったが、これまで自治体は「なんでも造ってほしい」体質になりがちで、利用する立場に立った交通網の整備を考えることができなかった。よって本当に必要なものがなかなかできない一方で、無駄なものばかり造られたり二重投資が発生したりするのである。利用する側が「何から造ってほしいのか」を見極めて、「何から造るべきなのか」を慎重に検討する姿勢が求められている。

(西田俊彦)



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Last modified: 2008/9/26

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